前回の記事では、日本酒の分類と名称の基本についてご紹介しました。今回はその続編として、日本酒の中でも“高品質な酒”として分類される「特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)」にフォーカスし、その8種類をわかりやすく解説いたします。
それぞれの酒が持つ香味の違い、製法のこだわり、そして飲み方のヒントまで。日本酒の奥深さに、ぐっと近づく一歩となるはずです!
特定名称酒とは?
国税庁の定める基準を満たした清酒で、使用原料、精米歩合、醸造方法などに一定のルールがあります。
分類は大きく2系統に分かれます:
・純米系(米・米麹・水のみを使用)
・アル添系(上記に加え、香味を調えるための「醸造アルコール」を添加)
さらに、精米歩合や製法によって下記の8種に細分化されます。
純米系4種
① 純米大吟醸酒
【精米歩合】50%以下
【特徴】香り高く、洗練された味わい
【おすすめの飲み方】冷やしてグラスで。香りを楽しみながら
選び抜かれた米を半分以上削り、手間を惜しまず丁寧に仕込む。フルーティで華やかな香りと、滑らかな口当たりが特徴。まさに“日本酒の芸術品”。
② 純米吟醸酒
【精米歩合】60%以下
【特徴】やや軽やかでフルーティな香味
【おすすめの飲み方】冷〜常温。料理との相性も良い
吟醸造りと呼ばれる低温発酵技術を用いて醸される、香りと飲みやすさのバランスが秀逸な一本。
③ 特別純米酒
【精米歩合】60%以下 または 特別な製法
【特徴】米の旨味と香りの調和
【おすすめの飲み方 常温〜ぬる燗。米のふくらみを楽しんで
製法や精米歩合において“特別”な要件を満たす純米酒。地酒らしい表情を持つことが多く、蔵ごとの個性が光るジャンルです。
④ 純米酒
【精米歩合】制限なし
【特徴】米のコク・酸味がしっかり
【おすすめの飲み方】燗酒も美味。家庭料理と好相性
添加物を一切加えず、米と水だけで醸されたシンプルな酒。米の旨味や酸味がダイレクトに感じられ、料理との組み合わせが楽しい。
アル添系4種(醸造アルコールを添加)
⑤ 大吟醸酒
【精米歩合】50%以下
【特徴】非常に華やかで上品な香りと繊細な味わい
【おすすめの飲み方】冷酒で。ワイングラスも◎
純米大吟醸に比べて香りの立ちが良く、キレのある後味が特徴。コンテスト出品酒にも多く見られます。
⑥ 吟醸酒
【精米歩合】60%以下
【特徴】軽快な飲み口と爽やかな香り
【おすすめの飲み方】冷やして食前酒にもおすすめ
吟醸造りの技術を活かしつつ、醸造アルコールで香味を調整。手頃な価格帯でも高品質なものが多いです。
⑦ 特別本醸造酒
【精米歩合】60%以下 または 特別な製法
【特徴】すっきりとした味わい、軽やかな飲み口
【おすすめの飲み方】冷〜燗まで幅広く対応
本醸造の中でも、精米や造りにこだわりがある“ワンランク上”の味わい。食中酒としても優秀です。
⑧ 本醸造酒
【精米歩合】70%以下
【特徴】飲みやすく、癖が少ないスタンダードな日本酒
【おすすめの飲み方】ぬる燗や熱燗にしても味が崩れにくい
リーズナブルかつ安定した品質で、家庭用から業務用まで幅広く使われています。
違いを知れば、選び方が変わる
特定名称酒の違いを知ることで、酒選びはより「目的志向」になります。香りを楽しみたいのか、料理と合わせたいのか、それとも酒だけでじっくり楽しみたいのか…
シーンに応じて適した一本を選べるようになれば、日本酒はもっと自由で、もっと美味しくなるのです。