日本酒と料理の相性、いわゆるペアリングは、食体験を一層豊かにしてくれる大切な要素です。ワインと料理のマリアージュに注目が集まるように、日本酒にも料理との組み合わせによって、味わいの広がりや新たな発見があります。ここでは、日本酒と料理のペアリングの基本から、具体的な例までをわかりやすくご紹介します。
ペアリングの基本原則
ペアリングにおいて大切なのは、「調和(マッチング)」と「対比(コントラスト)」です。つまり、料理と酒が似た風味や性質を持っている場合は調和させ、反対の特性を活かしたいときにはあえて対比させることで、それぞれの個性が引き立ちます。
また、料理の主な要素(旨味、甘味、酸味、脂っぽさ、香ばしさなど)と、日本酒の味の要素(甘辛、酸度、香り、旨味)を意識することで、より的確なペアリングが可能になります。
香り高い吟醸系 × 繊細な料理
吟醸酒や大吟醸酒は、フルーティーで華やかな香りが特徴です。淡白で繊細な味わいの料理、例えば刺身、白身魚の塩焼き、冷奴などと相性が抜群です。香りが強い料理だと酒の良さが隠れてしまうため、料理自体の主張が控えめなものがおすすめです。
純米系 × 和風の煮物や焼き物
純米酒や特別純米酒は、米の旨味をしっかり感じられるため、味付けがしっかりとした和食と相性が良いです。例えば、肉じゃが、魚の煮付け、焼き鳥(タレ)など、コクと甘味のある料理がよく合います。料理とともに、酒の旨味がじんわりと広がるのが魅力です。
酸味のある日本酒 × 揚げ物や脂の多い料理
最近人気の「山廃仕込み」や「生酛仕込み」の酒は、酸味が強く、コクのある味わいが特徴です。これらは唐揚げ、天ぷら、角煮といった脂の多い料理にぴったりです。酸味が油をスッキリ流してくれるため、重たい料理でも後味が軽やかになります。
冷酒と燗酒の違いも意識
日本酒は温度によって味わいが大きく変わる珍しいお酒です。同じ酒でも、冷やして飲むとシャープに、温めると旨味が引き立ちます。例えば、熱燗にして楽しむと、脂のある焼き魚や、味噌仕立ての煮込み料理との相性がさらに良くなります。
地方の郷土料理と地酒の相性は抜群
地酒は、その地域の水や気候、文化に根ざして造られており、当然ながら地元の料理と非常に相性が良い傾向があります。新潟の淡麗辛口の酒は、魚料理との組み合わせが最適ですし、秋田の濃醇な酒は、比内地鶏のきりたんぽ鍋によく合います。
デザートとも楽しめる日本酒
意外に思われがちですが、日本酒は甘味との相性も良く、デザートとのペアリングも注目されています。貴醸酒や濃厚なにごり酒は、チーズケーキやチョコレート系のスイーツと好相性です。また、梅酒を使った日本酒ベースのリキュールも、アイスクリームなどに合わせると楽しい組み合わせになります。
まとめ
日本酒と料理のペアリングは、難しそうに思えて実は自由で楽しいものです。自分の好みを見つけながら、さまざまな組み合わせを試してみるのが一番。おうちごはんに一工夫加えて、日本酒との相性を探る「小さな実験」を楽しんでみてはいかがでしょうか。